格好わるい格好つけ。

随筆

 妻といっしょに筋トレ。我が輩は左足を軸にバランスとるのが苦手。案の定バランスとれず、途中あわあわする。あわあわを妻に見られるのが少し恥ずかしく、そして「一度も中断せずにしっかり左足を追い込みたい欲」が増したので、一度右足をついて仕切り直したりあわあわも見せずに、バランスを崩しながらもそれを誤魔化すようにぴょんぴょん飛びながらクルクル回りながら移動しつつ、部屋中を動き回りながらなんとかワンセット30秒を両足つかずに乗り切った。結局はそれ自体もあわあわなので、その後、動き回っていた理由を正直にネタバラシ。「あっこいつ誤魔化してんな」と思われるほうが恥ずかしいため。

 ふと思い出した。学生時代。帰り道。明らかに転けそうになっていたくせに「転けてませんよ」みたいな澄まし顔でポケットに手を突っ込み肩を少し揺らしながら堂々と歩き、己が感じている恥ずかしさを格好つけで誤魔化そうとする人。こんな人を度々見かけた。
 側から見たら全然誤魔化しきれていない。格好つけているが、むしろ格好わるい。本人以外はみんな気づいている。「いや、いま転けそうになってたよね」「そして、ごまかしているよね」そう思いながらニタニタしている事実を本人以外は愉しんでいる。

 まあこれは学生に限らず大人にも該当する話だが。このようにプチアクシデントからの対応が下手なやつは意外と多い気がしている。事後対応のパターンは、おもに4種類ある。だいたいの人がこの4パターンどれかに当てはまる。

 1——ごまかして、格好つけるパターン(前述の奴)

 2——ごまかして、格好つけないが、恥ずかしさを紛らわせようと、あえて「ぁっ! ぶね! あっべ〜〜(笑)」などと声に出し、オープンで周囲が声をかけやすい状況を構築し自虐に走るパターン。
 結果的にソレは笑いに変わり、気まずくならないというのもあるし「自分は転けそうになったことを恥に思っていませんよ?」をアピールすることで、周囲の者を《現在起きた転けそうになった事実そのものはべつに恥ずかしいことではない》という結論に暗黙的に誘導的に着地させようする試み。
 だがしかしそれは恥ずかしいからこそやっている《恥ずかしくないアピール》であり、それもまた恥ずかしい。バレている。

 3——潔く正直に事実をサクッと告げるパターン。苦笑いしながら「転けそうだった」みたいなことをひとこと言っておけばいい。相手からは「ね」「思った」くらいしか返ってこない。これは近くにわりと親しい人がいる場合に限る戦法だが、これが一番無難。後に引きづらないし、周囲も特に何も思わない。

 4——黙るタイプ。なんにも動じず、完全に無かったことにする。格好つけたり誤魔化したりする演技はしない。真顔で歩みを再開させる。起きてしまったことは仕方がない。これ以上の被害は生みたくない。黙るが一番、スルーがいちばん。の合理的遮断タイプ。周囲には恥ずかしいとは思われないが、可哀想なオーラを漂わせているため変に気遣いな言葉をかけられてしまい対応が面倒になりその際にちょっと恥ずかしくなる事もある。あとは逆にノーリアクションであることが周囲からしたら面白い場合もある。だが一応これも無難な戦法パターンではある。

 以上が事後対応パターン4種。きっとどれかに該当するはず。
 転けそうになった時、転けた時、電車の吊り革に頭をぶつけた時、顔面に虫が直撃しそうになり必死に避けた時、耳元で急に蚊の音がして「ぅわっ」みたいなリアクションをしちゃった時など、ちょっと恥ずかしい。が、だからといって変に誤魔化したり格好つけないほうがいい。かえって格好わるくなる。一度でもやってしまうと《しょぼそうなイメージ》がついてしまう。そのイメージを薄めるのは意外と大変。だからもし恥ずかしいシチュエーション、プチアクシデントが起きた際は上記であげた3か4の戦法パターンを推奨する。格好つけると格好わるい。