オノマトペシンドローム.
≪ふわふわ≫とか≪じゅわ≫とか≪とろとろ≫とかの擬態語が過剰に使われすぎている昨今。自分はそれに嫌悪を感じている。いや、べつに擬態語そのものが嫌いなわけではない。擬態語(オノマトペ)は使う人によって程度は変動するが、様々な言葉を組み合わせなくても簡単に物の状態を表現できて便利。同じ対象であっても各国で音や表現が大きく異なり、むしろ日本人以外には通じないものまであるから面白い。だからオノマトペそのものを否定しているわけではない。過剰に不適切にオノマトペを乱用しているこの国の流行的な風潮がずいぶん鼻につく。そういう話です。
レビュー広告ポスター食レポ、あらゆるところで過剰なオノマトペが生成されている。例えば、≪トロじゅわ≫と書かれたバナナは≪トロ≫も≪じゅわ≫も感じなかった。ただのバナナじゃん。そう思った。たしかに、いつも食っている最安バナナよりは甘くて美味しいと思ったが。≪トロじゅわ≫ではなかったね、明らかに。これは明らかに昨今の流行に引っ張られすぎている。≪トロじゅわ≫というオノマトペの融合体をつかうことに必死になっているというか、使えば売れると思っているというか、まあどうせなんとなくで決めただけだろう。安易に。
あとは生クリームの表現に≪ふわふわ≫とかスポンジケーキに≪しゅわしゅわ≫とかを使っているシーンをちょいちょい見かける。たしかに適している商品は存在する。だが体感的に9割は≪ふわふわ≫も≪しゅわしゅわ≫もしていなかった。例はいくらでもあり、あげたらきりがないので、このへんにしておくが、とにかく不適切なオノマトペを思考停止で無理矢理に乱用する世の中の大多数にちょっと苛々する。
大手の飲食店も過剰なオノマトペを乱用していて「それでいいのか」と呆れながらに思っている。だってそれは過大表現なわけ。誇張が過ぎているわけ。つまりは詐欺みたいなもんなんだよね。いくらオノマトペの定義が曖昧だからといって、明らかにふわふわしてない物にまで≪ふわふわ≫と表現して売り出すってことは詐欺みたいなもんじゃん。美味しさやヴィジュアル等に自信があり売れると思うから発売まで至っているワケなのに、その商品の大事なキャッチフレーズが≪ふわふわ≫って。しかもふわふわしてない。自信があったら、強みがあるなら、それを適切に言語化すればいいのに、しない。しないのか、できないのか、わからないが。つまりは商品に自信がない。愛もない。そういうことだよね。だからそういう杜撰なオノマトペを見かけるたびに「あぁ……自信ないんだな」「そこまで美味しくないんだな」と思うようになった。けっきょく買って食べても微妙なことが多いので、自分はそういうオノマトペシンドローム商品は買わなくなった。
本当にふわふわしているなら≪ ふわふわ ≫で表現していいけど、当然、でもそうじゃないのならわざわざそんなオノマトペ表現しなくていいのに。良い物を作ったのなら良いのはほぼ間違いないのだから、あとはそれを適切に言語化すればいいだけなのに。シンプルな話なのに。ソレを表す日本語ってたくさんあるじゃん。日本語じゃなくてもいいけど。言葉なんてたくさんあるわけじゃん。芸術的な美しい描写を毎回考えろとか言わないじゃん。誰も。だから杜撰に思考停止でオノマトペを使わないほうがいいんじゃない。信用を失うし、馬鹿で軽いアピールになるし、思考が止まっているので老後が心配。ぼけるよ。
以上、おしまい。「ふわふわしていない物にまで≪ふわふわ≫と表現してしまうふわふわ者のふわふわ感」についての小咄でした。もう既に日本中がオノマトペシンドロームになっているので、なかなかに手遅れではあるのだが、この先の未来でわれわれ日本人の言語が「ふ」と「わ」だけにならないことを祈っています。