ふと綴る。記念の日。

随筆

 元々かなり飽き性であり意見の相違に敏感で人付き合いが苦手な我が輩は、女性と付き合ってもすぐに別れていて、そのうえ孤独感に弱く寂しがりやな面も強くあり、すぐに彼女をつくってはすぐに別れてを繰り返してきた。別れる前から他の女性に興味が出て浮気をしたこともあった。

 生憎、けっこうモテていた。小学生の時は微妙にモテて、中学生になってから一気に爆発的にモテるようになった。
 我が輩は自分にコンプレックスを強くもっていて、なぜ自分がモテているのか不思議であった。でも事実、ときどき逆ナンされるくらいにはモテていたし、Eメールでそれっぽいことを言ってそれっぽい雰囲気をつくり出せば、すぐにokを貰えた。

 だからその気になればすぐに彼女は出来ていたし、飽き性を拗らせ欲求が加速し心が満たされていない時は浮気もしていた。
 女性に飢えているわけでもないのに女性に飢えている、という矛盾的状況であった。すなわち暴走思春期君であった。

 が、ある時にすっと恋愛とかどうでもいいと思い彼女を作らなくなった。だいたい21歳くらいからだったと思う。ある女性と1年半くらい付き合い、けっこう疲弊した。この時に燃え尽きたのかもしれない。たしかに彼女との日々は楽しかったが、楽しさよりもネガティヴな感情が結果的に大きく上回っていた。酷く悲しみ酷く怒り、お互いメンヘラで、激しい喧嘩が頻繁に勃発した。最後は怒鳴りながら激しく罵倒しながら乱暴な別れ方をして後味が最悪だった。

 なにもその女性が悪いわけじゃない。こちらにも多くの非がある。後日談ではあるが、その4年後くらいに縁を切っていたその彼女と話す機会が訪れた。その時に思い出話が展開されたが、お互いが相手を罵倒したり「あなたが原因でしたね」みたいな発言は一度もなかった。お互いに「いやいや自分が悪かった」という主張をしていた。つまりはお互い様であり、時間はかかったが彼女とはなんとか円満な関係に戻った。

 だから彼女との恋愛をトリガーに女性恐怖症とか人間恐怖症になったわけではない。自分にも多くの非があるからだ。単に、疲弊した。これまで多くの女性と付き合い、または付き合わなくとも恋愛をしてきた。愛があるのかないのかわからないような関係もあった。
 それらの過去に後悔はそれほどないし、付き合ってきた女性は皆良い女性であった。つまりは疲弊の原因は他人ではなく自分にある。

 自分の激しい心の変動、抑えきれない様々な欲求、真剣に向き合ってはいるが相手を受け止める器がない、他にも色々とあるが……とにかく「自分に恋愛は向いていない」そう悟った。ようやく自分を把握した。
 彼女なんていらない。人生においてそんな存在は邪魔くさい。結婚もしたくない。子供もいらない。自分にはやりたいことがいっぱいある。そんな3次元の恋愛ゲームをいつまでも不器用に楽しんでいる時間は自分にない。精神安定剤として孤独感を埋めるためだけに彼女をつくるのはもうやめよう——。
 そんな感じのことを21歳の我が輩は感じていて、そんな感じのまま6年くらい過ごしていた。その間、彼女はつくっていない。本気の恋愛に眼中はない。ときどき湧き起こるオスな欲求を満たすためだけにワンナイトな関係だけをなんとなく求めて過ごしていた。

 27歳の頃。この時も彼女はいない。結婚欲はもちろん、恋愛欲も相変わらずない。それどころではない。金や仕事や友人関係など色々ここには書ききれないほどの事件が色々とあり、つまりは不安定な精神状態であった。
 しかし、そんな時、出会った。自分の人生を変えるトリガーとなる人間と。ある1人の女性と。それが……今の妻である。

 本当に本当に本当に結婚願望はゼロだったし本気の恋愛もするつもりはまったく無かったが、なぜだろうか、惹かれていたのだろうか、いわゆる運命的な何かを無意識に薄らと感じとっていたのだろうか……いつのまにか付き合っていて、結婚していて、もう4年半。これまで付き合ってきた女性とは長く続かなかった。すぐに飽きてしまい、2年をこえた事は一度もないが、妻とはもう4年半くらい一緒にいる。

 現在の我が輩の心境として、妻に対して、飽きたとか邪魔だとか別れたいだとかそういうネガティブな感情は一切ない。もちろん後悔なんかも少しもない。浮気(不倫)をする気もまったく起きない。だから浮気となる行為は一度もしていない。
 もともと妻と付き合う前のこと、恋愛などには『どうでもいいモード』でいた。だからなおさら他の女性には興味がない。
 妻と出会って1年ほど経った頃から、性欲が明らかに大きく低下していた。しかし、オスであるから性欲が激しく湧き起こる事は今でも稀にあるが、その欲求を「他の女性で満たしたい」とは一切思えない。もし性欲が抑えきれなくなってきたら妻とすればいいだけの話であり、もし妻にその気が無ければ、事務的な自慰行為でもすればいいのだから。それであっさり解決。簡単な話。だから、浮気(不倫)は当然していない。他の女性に恋愛感情を持てない。

 妻と過ごして来た4年半、小さな喧嘩も大きな喧嘩も色々としてきた。特に付き合い始めは衝突が多かったし、面倒な事件もありお互いに疲れていた。
 でも、今となっては、辛い思い出よりも『楽しい思い出』のほうが大きく大きく上回っている。一緒にじゃれてふざけて笑っている記憶のほうが強くしっかりと残っている。
 今はほとんど喧嘩をしない。たまに小さな喧嘩をするが、別れに発展するほどの問題は起きていない。毎日、まったりと、のんびりと、落ち着いて過ごせている。妻との平和な日常に、たしかに幸福感を抱いている。

 言葉では上手く説明できないが、根拠の無い大きな自信が自分にはある。そして、ソレを、日常的に茶飯事的に感じている。「たぶん、一生、死ぬまで、この人といるんだろうなぁ」と。
 そんなことを結婚記念日の今日、ふと思い出し、ここに綴ってみた。