どうしても食べたくないVSどうしても食べさせたい

小説

 母
「食べ物は残さず食べましょう(ドヤ顔)」
 娘
「うわっ。いるよねそういう残さず食べることを無駄に、謎に、特に意味もなく強要してくる頭の悪い迷惑なやつ」

 母
「なに言ってんの常識でしょう」
 娘
「いやいや、常識って(笑) それ頭の悪い奴らが勝手に作り上げたおかしな風潮でしょ。押し付けないでほしいんだけど。迷惑だから。勝手にやっててってかんじ」

 母
「いいから。食べて。ちゃんと食べないと、大きくなれないから」
 娘
「えなにがいいの(笑) 聞いてた? はなし。 てかなに大きくって(笑) 大きくの基準は? 縦に? 横に? 厳密にそれぞれ何センチ以上だと『大きい』になるの?」

 母
「屁理屈いうんじゃない!」
 娘
「いや屁理屈じゃないでしょ(笑) 大きくなれないって言ったのはきみじゃん。だから説明を求めただけじゃん。合理的な説明を。質問しただけ」

 母
「栄養が摂れないでしょっつってんの!」
 娘
「ん、うん? 栄養は、だいじだね? でも栄養を摂ることと残さず食べること、なに関係あんの? ないでしょ」

 母
「あるでしょ」
 娘
「ないでしょ」
 母
「あるって」
 娘
「ないって」
 母
「あるからあるって言ってんの!」
 娘
「いやないから。ないものをあるって言わないでよ説明できないくせにさ。……栄養なんて必要な分だけ摂っときゃいんだよ。無理せず。自分のペースで。  残さず食べることにこだわったら過剰摂取だから。ただ太るだけ。我慢して食べてさ。栄養っていうかストレスじゃん。ストレス摂ってんじゃん。いっしょだからね。ストレス摂るのと。  糖尿病とかのリスクも上がるし。  逆に不健康」

 母
「不健康なわけないでしょ? 食べたくないからそう言ってるだけでしょ」
 娘
「はぁ……ぃやだからさあ?? 食べなくていいものは食べてなくていいでしょって。言ってんの。そういう話をしてんの。わたしは。  満腹だから食べたくない。満腹ではないけど眠くなるから食べたくない。不味いから食べたくない。美味いけど臭いからもうやめておこう。体調に影響でそうな気するからやめておこうかな。刺身は食べたいけどシャリは食べたくない。色々あるでしょ? 人間。ひとそれぞれ。食事に関しても臨機応変。ケースバイケースな対応が必要なんだよ。 そりゃ人間脳の構造が違うんだから好みとかにも差が出て当然だし。食事の目的は栄養摂取なんだから栄養摂取ができていればなんでもいいわけ。ある程度の栄養が摂れたんならもう食事を続行する必要性はないの。食べたくないのに食べるって、やりたくないことをやるってことだからね? シンプルにそれはストレスの原因だから。ストレスを食べてるのと同じ。死因の多くはストレスからくるの。精神的な病気ってかなり厄介らしいじゃん。よく聞くでしょ? ストレスが原因で何らかの病気になって死んでいく人。ニュースとかで。  健康のために不健康になるなんて本末転倒だよ。だから、ストレスになるくらいなら食べないほうがいい。残したほうがいいって。吐きそうになったりさ眠くなってパフォーマンスに影響がでるくらいなら、残したほうがいいの。わかる?」

 母
「なんかよくわかんないけど人間我慢することも大切だよ? あんたそんなワガママ言ってたらそのうちなんにも食べれなくなるよ。バチ当たって。もっと動物のことを考えなさい。命を頂いてるの。ちゃんと食べないと。かわいそうじゃない。もっと優しくなりなさい」
 娘
「いやまじ意味わからん。なに我慢って。なにワガママって。なにバチって(笑) しかもなに、動物でてきたし。急に。  あのね動物はべつに《残さないで食べてほしい》とか《残すなんてひどいよ》とか、そんなこと思わないでしょ。……いやたしかにかわいそうだよ? 殺されてんだも。でもそれはごはんを残すからかわいそうなんじゃなくて殺されたから、だから。動物がかわいそうなのは殺されたから。わかる? ある日突然人間という生物に自分・家族・仲間が殺される。その現実に動物は悲しみや絶望を感じる。だからかわいそうなの。  合理的な反論ができないからって都合よくそうやって動物とか言うのやめてよ。ほんと。むかつくから。  そんなん人間が作り出した都合のいい解釈。人間を肯定するための無理矢理な解釈。まじうざい。都合よすぎ。本当にかわいそうと思うんだったらさ、すぐにでも動物を殺してるやつを止めに行ったら? そしてもう食べるのやめたら? かわいそうなら」

 母
「……せ世界には恵まれない子供たちもいるの!!」
 娘
「だから関係ないって……。恵まれない子供が恵まれないという事実とこの話は関係ないの。  人間に限らず。まともに食事ができない恵まれない生物はいるよ。 かわいそうだし自分がそうなったら嫌だなとも思うよ。でもそれは《食べる必要の無い物を我慢して食べなきゃいけない理由》にはならないから。だからなにってかんじ。別問題」

 母
「作った人の気持ちとか考えたことあんの? ないでしょ。あんたなんて食べてるだけなんだからいつも」
 娘
「いや知らない。逆に聞きたい。無理してストレスを食べなきゃいけない人の気持ち考えたことあんの? ……何度も言うけど、食事の目的は栄養摂取。で料理を振る舞うってのはさ《栄養をなるべく美味しく、気持ちよく摂ってもらいたい。健康的に生きてもらいたい》という思いがあるんじゃないの本来は。知らないけど。でもじゃないなら尚更。迷惑だからやめてほしいんだけど逆に。 嫌だと言ってる人に《作った人の気持ちを考えろよ》なんて無責任すぎるから。ただの自己満。マスターベーション。承認欲求を満たしたいだけ。 他人の不幸、他人の命を利用して自分を満たしたいなんてさクズだよ。クズクズ。迷惑すぎるよ。  どうせせっかく作ったものをゴミ箱に捨ててほしくないとかそういうのでしょ? だから無理してでも食べろって? 言っとくけど胃袋はゴミ箱じゃないからね。あたりまえの話だけど。不必要な物なのに、なんでも胃袋に捨てようなんて、自傷行為みたいなもんじゃん。 なんで胃袋をゴミ箱にしなきゃいけないの。残飯はゴミ箱に捨てればいいわけで、胃袋に捨てちゃだめでしょ。けっきょく胃袋に捨てるなら、ゴミ箱に捨てたほうがいいでしょ。いや普通に考えて。  もうさ……クソみたいな感情論で無駄食いを他人に強要するのはやめろ!!!! 迷惑なんだよ!!!!」

 母
「迷惑なら食うな!!!! もう!!!! なにも!!!!」
 娘
「なんでだよ!!!!」