あっそ、踏んじゃえ。
怒り。立腹。復讐心。それらすべてが時間の無駄。たとえ自分が悪くなくても。怒りという感情で自分が得することは何もないし。怒りという感情によって解決する問題も何もないし。
「私は怒っているのだぞ」とアピールをしたところで「私は怒っているのだぞ」が伝わるだけで。制御できずに怒りという感情に支配されているのだな、という情報を相手に与えるだけで。
脳内にていつまでもいつまでも怒りの原因であったシチュエーションをエンドレスに再放送したところで、面白くも気持ち良くもない。もう過ぎてしまったことなので、記憶をわざわざ再放送したところで、どうしようもない。何も解決しない。再放送は『らんま1/2』とか『王様のレストラン』で充分だ。
そんなことをしている時間、神経、労力があるならば、少しでも納得のできる方向へと導いてくれる解決案を探ればいい。考えればいい。もしくは一層のこと、諦める。かえってそのほうが良い結果に着地するケースもある。
べつに『YESくん』とか『YESちゃん』になろうとか、なんでもかんでも我慢しろとか、そういうくだらない根性論てきな御呪いを展開するワケではない。
もし肉体的暴力や精神的暴力を発砲されたならば、ケースによっては徹底的にとことん闘うほうが心身ともに落ち着けるかもしれないし。コストをこねこねしてみて、それが自分にとってまぁまぁ大きな利益になるならば、弁護士に投げて裁判で解決すればいいし。
でもねー……多くの場合、裁判を起こそうとか、そこまでのスケールには発展しない。もっと低いところでの禍。時間が経てば忘れているような、程度の低めな怒り。大事ではない小事な立腹シチュエーションのほうが日常には多く潜んでいて、それらと我々は日々悶々と闘っている。のらりくらり。よけたり、ぶつかったり。うまくできたり、できなかったり。
レジで横入りされた。店員の態度が悪かった。歩いてたら車に水をかけられた。肩がぶつかった。非合理的な理由で上司に叱られた。彼氏彼女親子供友達他人に言われたことが何かちょっと気に食わない。——日常的にいくらでも起こりえる立腹シチュエーション。たしかにムカつく。うぜえ。なんなんだよまじで。邪魔しやがって。でも。いちいち反応していたらきりがない。だって、そんなの、無数に発生することだから。この世界においては。
かといって? その立腹シチュエーションを迷惑に製造しつづける愚かな人間共ひとりひとりに説教(教育)をして厚生させるみたいなことは現実的な話ではない。
つまりは自分。思考。行動。確率。
考え方を変え、立腹シチュエーションがなるべく起きないよう、選択(行動)するしかない。
立腹シチュエーションが起きやすい場所には行かないとか。行ったとしても時間帯を変えるとか。起きないように、行かなくていいように。環境整備、環境構築するしかない。
自分を変える。思考を変える。日常に多く潜んでいる立腹シチュエーションに付き合わない。省エネモードで。反応しない。時間、労力、神経、感情、心の無駄遣いをやめる。
地味だけど、コツコツ。泥臭く、変えていくしかない。これが自分の人生を豊かにする最適な手段。
——じゃあ具体的にどうしたらいいのか。って話になってくる。
「許す!」
そう、許せばいい。
『許す』というスキルを習得すればいい。
日々熱心に鍛えあげた『許す』を身に纏い、いちいち立腹シチュエーションに反応しない脳みそを発酵構築していきたい。
すぐに身につく簡単なスキルではない。加齢と共に身につく『時間が解決してくれる系スキル』でもないし。
ソレをどのように考え、どのように捉えるか。日々の努力の積み重ねで癖づいてゆくモノであって。
10代だろうが20代だろうが60代だろうが80代だろうが関係ない。
『許す』を持っていない人間は現にこの地球上でたくさん存在する。でも持っている人は持っている。
『許す』は対人関係で大きく役立つ。
生きていくうえで極めて重要なスキルの一つ。
家族、恋人、友人、同僚、先輩、上司、先方、等等。
誰であれ有効。友好で良好で温厚な関係が築きやすい。
些細なトラブルを些細なまま終わらせる事ができる。
『許す』というスキルは、どう鍛えどう身につけどう発動すればいいのか。
「予測をたてておく!」
これまで体験した数々の立腹シチュエーション。自らの体験はないが見聞きした立腹シチュエーション。加え。生きていれば起こりうるであろう立腹シチュエーション。又の名をストレスシチュエーション。
これらを常日頃、余裕がある時に脳内でシミュレーションして、予測をたてておく。
「あんなことがあったな。嫌だったな。もう味わいたくないな。大事にもしたくないな。じゃあ、こういう時は、こうしよう。こういう馬鹿よくいるし。きりがない。相手にしない。考えても意味がない」みたいなやつを歯を磨いてる時や食器を洗ってる時なんかにふとやればいい。
なにがあっても冷静に対処できるように、冷静に自分の感情を制御できるように。
実際に立腹シチュエーションに遭遇したときに、
「まっ、想定内想定内」
「(こういうの)あるよね〜」
という状態になれれば勝ち。
でも、そこに持ってくまでが、大変だったりするんだよねー。
そういう時のコツ。
頭の中で、
「やれやれ(^^;)」
と唱える。
この「やれやれ(^^;)」が、まぁ効く。効果は抜群だ。
「やれやれ(^^;)」を甘く見てはいけない。
もしあなたが立腹シチュエーションに困っているならば、いずれ「やれやれ(^^;)」に救われる事になるだろう。「やれやれ(^^;)」の凄さを身をもって思い知るだろう。
「やれやれ(^^;)」が癖付くまで最初は時間がかかる。忘れがち。シンプルなのに難しい。己の感情をなんとか強制コントロールしつつ「やれやれ(^^;)」をしなきゃいけないから。
立腹シチュエーションで怒りの感情が出現したとき、まずは棒読みでもいいから「ヤレヤレ(真顔)」と頭の中で唱えてみることが大切。
棒読みでも、やればやるだけ、癖づいてくる。
たった4音、4文字の呪文「ヤレヤレ(真顔)」を唱えるだけで、自然と、怒りモードから『どうでもいいモード』へ切り替わってゆく。
「ヤレヤレ(真顔)」や「やれやれ(^^;)」に慣れてきたら、他の言葉をくっつけてみるのも、アリ。
「やれやれ(^^;) こいつこんな当たり前なことも知らないのか(^^;)」
「やれやれ(^^;) 前提条件くらい理解しとけよな(^^;)」
「やれやれ(^^;) 赤ちゃんなのかな? ワンちゃんなのかな?」
「やれやれ(^^;) あっそ、踏んじゃえ!」
こんな感じで様々なバリエーションの「やれやれ(^^;)」を脳内BGMとして流し続けたい。
そして、さらに、それに加え「自分が今やらなきゃいけないこと」「わりと緊急かつ大きい用事」「今ではないけど人生においてやらなきゃいけないこと」「必須ではないけど単純に興味があってやりたいこと」なんかを思い浮かべてみる。
すると、
「あっ、こんなやつに構ってる時間はない!」
「こんなやつにムカついて人生を無駄にしている場合ではないぞ!」
「怒りなんて踏んづけてしまえ!」
「あっそ、踏んじゃえ!」
と冷静になってくる。
自分の人生において大切なこと、やらなきゃいけないことの優先順位が明白になることで、冷静になり、怒りは自然と消えてゆく。
——そりゃまぁ、こっちに非がない、理不尽な事が起こるとムカつく。
「いや明らかにお前が悪いだろ」
「明らかにお前の言ってることおかしいだろ」
「まじバカ疲れる。非合理的すぎる」
ってなる。よくなる。よくある。
やっぱ反応しちゃいけない、付き合っちゃダメってわかってても、瞬間的にムカついちゃう。
だから、瞬間的にムカつくのはいい。それくらいは許してあげる。そんな自分を許してあげる。「一瞬ならいいよ」って。
でも、それを引き摺るのはやめたほうがいい。どうでもいい馬鹿なことはさっさと忘れたい。1秒だって無駄にしたくない。時間は命。とても貴重だ。だからズルズル引き摺って数々の大切なモノを犠牲にするべきではない。どんなに相手が悪くても、関係ない。怒りという感情は何も解決してくれない。自分にメリットを生まない。
時間、神経、労力、命の無駄遣い。
「無駄」の原因が相手にあっても、無駄を継続させてる原因は自分。
思考の矯正、脳みその再構築は努力によって可能だから。それを放棄するってことは自分にも原因がある。自傷行為そのもの。
そんなどうでもいいクソ野郎に時間を費やすくらいなら、大切な人と対話するための時間に費やしたほうが絶対にいい。そのほうが人生は幸せと言える。幸福度は爆発的に上がる。
怒り、復讐、そんなものには意味がない。時間の無駄。
そんなものはノールックで斬り刻み切り捨てて、いちいち反応しない。『許す』を発動する。構わず踏んづける。
なのでね。一瞬だけならムカついてもいいけど、その後は上手くやりたいよね。
とにかく、マッハで許せばいい。
「やれやれ(^^;)」で水に流せばいい。
「あっそ、踏んじゃえ!」で踏んづければいい。
でもねー。そう思ってても、わかってても、怒っちゃうんだよねー。……やれやれ(^^;)