「めんどくさい」には需要がある。

随筆

 宝物は、めんどくさい場所に埋もれている事が多い。なぜなら、誰も、いかないから。だから「めんどくさい」には需要がある。

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『悪い直感は、良い知らせ』

 例えば、一般宅への「飛び込み営業」の場合。くもの巣が張り巡っていてウンコが落ちていてウンコ臭くて薄暗い細道があり、その先に一軒の家があるかもしれない。という設定で。

 このような場合、ほとんどの人間は「なんか嫌だなぁ」「行きたくねえなぁ」「どうせ(家なんか)ちょっとしかねえよなぁ」「(ここじゃなくても)他にもあるし」「……めんどくせ」って思うはず。その汚くてめんどくせえ道を素通りしてしまうはず。

 でもそんな時は迷わずその「汚くてめんどくせえ道」へと勇気を出して行ってみたほうがいい。営業で数字を上げるには、貪欲に地道にコツコツが大事。それならライバルが圧倒的に少ないめんどくさいところには飛び込んだほうが得。

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『根拠のない偏見』

 汚くてめんどくせえ道の先には、大体ボロかったり汚い家があったり、庭で一人でブツブツ言ってる人がいたり、そういうケースもなくはない。一見ヤバそうな気もするが、いざ話しかけてみたら全然ヤバくない事は多い。

 人はヴィジュアルで第一印象が決まるが、でもこの場合はヴィジュアルで偏見を持たないほうがいい。せっかく話せる人かもしれないのに、話さないなんてもったいない。契約の機会を逃すなんてもったいない。綺麗な家や綺麗な人でも話してみたらパッパラピーで全く会話にならない人もいるので、偏見はもたないほうがいい。

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『ラッキーは意外と多く落ちている』

 経験上、めんどくさいところには「興味はあるんだけどね、誰もこないから(契約に)」「ずっと前に契約してたんだけど、終わったら来なくなっちゃって、まぁいいやって」みたいなラッキー客は意外と多かった。これは完全に宝。口説かなくてもハンコを押してくれる貴重な宝。

 だから宝探しゲームだと思って、どんどん冒険したほうがいい。デメリットはとくにない。時間は無駄になるかもしれないが、それは結果論。綺麗な所だろうがめんどくさい所だろうが一件も漏らさずにその地域に住んでいるすべての人間と話す勢いで貪欲に宝を探しまわりたい。

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『偏見はもったいない』

 ——とまぁ前述はほんの一例だが、だいたいどんなことにも言えること。世の中のサービスは「めんどくさい」を解決してくれるモノばかり。つまりそれはめんどくさいには需要があるってこと。

 ゴミ山の中にも宝はある。レッドオーシャンの中にも小さくブルーオーシャンが広がっている。人がやらない「めんどくさい」に自分がどう向き合えるか。人によってはそこに大きなチャンスがあるのかなと思う。これからも勇気と貪欲さを持ちコツコツと泥道を歩きつづけたい。